10 月


モルモット 檻にひしめき 天高し (植田一粒子)

金色の 仏具に畏れ 秋彼岸 

号砲や 走者飛び出す 秋の中 

戦跡 葛山深く 眠りたる 

一面に 稲穂の波や 秘湯の宿 

湯上りや 月白の帰路 優しかる 

閉園の 広場に遊ぶ 秋の猫 

 

山霧の そこここ登り 動き居り  (津上 アサ)

秋の空 つと白き鳥 横切れり

目のあたり 稲田黄金の 波うてり

 

蜻蛉の羽 透きたる空も 青かりき (秋至) 

吾羽の 点数しらぬ 天道虫

釣針の 外れて空の 鰯雲

秋霖の 水輪いくつや 池の暮 

かりがねや 残されし者 逝きし人

長身の 帽子ひとつや すすき原

宵闇や 瀬音を胸に 赤児泣く

灯の消えて 窓辺の蔦も 寝に入りぬ

瓶に挿す 秋草どれも 下を向き

朝霧の 消えなんとして 大地ゆれ

鰯雲 かたまりゆける 日暮かな

頂上も ふもとも道の 草の花

吾声を 聞けよとせまる 法師蝉

声に声 重ねて虫の 一夜かな

石仏の 涙一筋 露の跡

ぶら下る 他なき糸の 鬼子かな

流水の 落つる速さの 桐一葉

名月や 池にさざなみ 立ちてきゆ

敬老の 昼寝を賜ふ 一日かな

秋天を 噛みつ岩峰 暮れにけり

銀漢の 銀のさざ波 山気澄む

山頂の 絹のきぬずれ 天の川

天は天 地には子狸 星月夜

水あらば 身内に銀河の 水引かん

見上げても 銀河の遠近 定まらず