9 月


 

目覚むれば 月影の中 眠りをり (津上 アサ)

 

夕焼の 茜帯なす 木の間かな

 

今宵はも 仲秋の夕月 とはいへど

 

良き程に すすき活けあり 病廊に

 

一筋の 日矢一条の 滝ひかる (秋至) 

 

 雨の中 きょろきょろきょろと 羽抜け鳥

 

 池の端を マイウェイとして 鬼ヤンマ

 

 蝉は声 止めてみたりも 致すかな 

 

 峯雲の 余白の天の 月の点

 

 カラオケの 隅に咲かせて 水中花

 

 幾ひろや 海底足下に 立泳ぎ

 

 身を守る すべなく飛べる 糸蜻蛉

 

 下闇の 闇濃く白き 蝶飛来

 

 走馬灯 母子の顔を 廻りけり

 

 走馬灯 肌に映して 母授乳

 

 走馬灯 消えにし闇の ワルツ曲

 

 残像と して走馬灯 消えし闇

 

 走馬灯 消えにし闇へ 失せし時

 

遠泳や 夕日と吾を 分つ海

 

 

 炎天来て 受付嬢の 顔白く  (植田一粒子)

 

 裸婦像と 並びて我も 夕涼み

 

 祖先の声 墓山に沸く 蝉の声

 

 登山道 老人のリュック ちんまりと

 

 ゆっくりと 朝の珈琲 避暑の宿

 

 夏嵐 峯の山笹 騒ぎたち

 

 路次の 狭間になつかしき 夏の海