JUST JAPANJune 2005


     
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エッセイと短編小説

ジョン・ロングの「シェイクスピアの音楽理論」に基くシェイクスピアの「テンペスト」の戯曲・音楽構造の一分析(その8)

       作者   石塚 とも   (いしづか とも)    

作者の略歴
舞台芸術研究者。1966年東京生まれ。4つのアメリカの大学と大学院で舞台芸術を学ぶ。米国在住8年。出身校(最近の順に)東京芸術大学、パデュー大学院、オレゴン大学院、南オレゴン大学、サウスウェスタン・オレゴン短期大学、明治学院大学。Phi Kappa Phi(全米大学優等生会員)、USITT(米国舞台技術協会員)。趣味はピアノとバイオリン。

 

シアターサウンドに応用されるジョン・ロングの理論 (続き)

前述の歌「黄色い砂浜へおいでよ」は「テンペスト」の中でどのように音楽が超自然生物を際立たせているかのほんの一例である。その歌はエリアルの特徴である超自然性が示唆されており、フェルディナンドの目からはエリアルは完全に見えないという状況を歌が見事に作り出している。なぜなら、フェルディナンドは歌の主が誰だか知ろうと再三にわたって周囲を確かめるが、いずれも徒労に終わっているからである。透明になれるというエリアルの超自然性はもちろんのこと、島全体が不思議なものにあふれていることも音楽が一翼を担っている。「シェイクスピア・ハンドブック」の著者であるレビィ・フォックスは次のように論じている。『「テンペスト」の中で、エリアルの歌は島全体の持つ超自然性の一部であり、「黄色い砂浜の上においでよ」はその歌の持つ不思議な世界と、まるで夢でもみているかのようなふわふわした状態を作り出している。まさに島の魔法が歌と音楽によって強く表現されている瞬間である。(222)』端的に言えば、フォックス氏のコメントは歌が魔法に代表される超自然性を戯曲の中に組み込んでいるという主張なのである。
魔法を使いこなすという点から、サイモンド氏は主役のプロスペローと自然をコントロールできる能力を持つオルフェウスというローマ神を比較してユニークな考察を加えている。(61)同氏によれば、「プロスペローはジャコビアン朝に生きたであろうオルフェウスであり、音楽の甘い調べにのせて魔法を操り、自然をコントロールすることの必要性を誰よりも知っているのだ」と主張している。甘い調べを作り出せる楽器では当時リュートというバイオリンに似た弦楽器が広く使用されていた。おそらくエリアルの楽器はこの甘いハーモニーを奏でることが可能なリュートであっただろう。クリステン・オルセンは、著書「シェイクスピアのすべて」の中で、ルネッサンスのシアターサウンドプラクティスを振り返る。「リュートがすべての楽器の中で、音色が単にやわらかいだけでなく、さまざまな感情を表現することができる多才な楽器であった。(485)」このことから、エリエルには甘い調べを歌うシーンが幾度となく訪れるので、リュートがかなりの頻度で使用されたと考えることが可能である。
(続く)



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