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ジョン・ロングの「シェイクスピアの音楽理論」に基く
シェイクスピアの「テンペスト」の戯曲・音楽構造の一分析 |
作者 石塚 とも (いしづか とも)
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作者の略歴
舞台芸術研究者。1966年東京生まれ。4つのアメリカの大学と大学院で舞台芸術を学ぶ。米国在住8年。出身校(最近の順に)東京芸術大学、パデュー大学院、オレゴン大学院、南オレゴン大学、サウスウェスタン・オレゴン短期大学、明治学院大学。Phi
Kappa Phi(全米大学優等生会員)、USITT(米国舞台技術協会員)。趣味はピアノとバイオリン。 |
はじめに
ケンブリッジ大学発行による「シェイクスピア概説」は同大学主催のシェイクスピア学会の定期刊行物であるが、1998年刊行の同刊行誌上で、研究者の一人であるイリーナ・チョーリッジ氏は「何千もの楽器が高らかに音楽を奏でる18世紀ロンドンのステージプロダクション・テンペスト」と題して、シェイクスピアの「テンペスト」における音楽的見地からの考察を発表している。チョーリッジ氏の論説の最大の焦点のひとつは次の一段落に要約される。
ウィリアム・シェイクスピアの「テンペスト」はシェイクスピアの作品中、最も音楽性に富んだ戯曲で、その音楽性を数多く指摘されてもいいはずなのに、その方向からの研究はほとんどなされていない。
同氏の主張を言い換えれば、「テンペスト」の戯曲構造をその音楽性から再考察する必要があるということに他ならない。妖精や魔物などの超自然生物たちとごく普通の人間が混在する同作品において、言うまでもなく音楽は彼らたちの住む世界を作り出す大切な要素のひとつである。チョーリッジ氏の論説に著しく刺激されたのがきっかけで、シェイクスピアの「テンペスト」をこれまでの戯曲研究者たちが踏み均してきた英国植民地論や17世紀研究論を用いずに、戯曲構造を分析してみようというのがこの論文を執筆することになった発端である。実質的には、シェイクスピアが登場人物の感情、知性、性格、生活環境において音楽がどのように影響を及ぼすのかを洗い出していくのがこの分析の狙いである。本論ではジョン・ロング構築の「シェイクスピアの音楽理論」に基づいた「テンペスト」の戯曲構造の分析が、作品中での音楽使用の重要性をさらに明らかにし、同作品をデザインする舞台音響家に対する効果的な一指標となることを証明していく。
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本分析の意義
周知の通り、シェイクスピアと彼の作品である「テンペスト」の研究論文はかなりの数にのぼり、中でもいくつかの論文はその音楽性を指摘しながら戯曲構造に迫っているが、どれひとつとしてシェイクスピアの音楽使用例を応用して構築した理論はない。さらに、「テンペスト」を実際に舞台でプロデュースする際に、同作品をデザインする舞台音響家たちへ効果的な指標として提供していない。文学性を重視した論評の中には少なからず、音楽を題材にして理論構築を試みるものもあるが、どの批評にしても舞台音響デザイナーの目から書かれたものはない。以上の根拠から本分析を展開していく意義は明らかであり、文学性重視の戯曲研究を本来の「舞台で実際にプロデュースする」という領域まで広げて論説する点においてもさらなる意義を有する。
(次号へ続く)
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