当月号 TOPへ

Just Jpan 2001 9月号
  ≡ インディーズ芸人列伝 Vol.3 「良樹 ☆ 純三」 ≡    
中村 壮快 

 僕は、星の数ほどのインディーズ芸人を見てきた。その中には将来売れるかも知れないという期待を背負ったインディーズ芸人も居れば、一生インディーズ芸人だろうと思わせるインディーズ芸人も居る。インディーズ芸人にも動物のように種類があるのだ。誰が分類するのかは知らないが。

 今回、紹介するこの『良樹☆純三』
 彼らは間違いなく、一生インディーズ芸人というレッテルを貼って生きていくだろうと思わせる要素が満載だ。
 このコンビ、芸歴は6年、兵庫県出身の幼馴染コンビ。得意ネタは時事ネタ、毒舌ネタ、下ネタ、等。女の子のファンが一人も居ないという、現在稀に見るコンビである。

 そんな二人に僕は五年前に出会った。出会った事を後悔させる出会いだった。何故なら 『 ダサイ 』 二人だったからだ。当時、僕は『爆笑BOOING』という関西ローカルの番組にレギュラーを持っていた。この番組はいわゆる勝ち抜き番組で芸人さんがネタをして面白ければ合格、面白くなければ不合格という単刀直入な内容。僕は合否が決まった際にそれを視聴者に伝える役目でブラウン管に出ていたのだ。僕はその番組で絶対合格しない芸人さんの一つの共通点を発見した。

 その共通点は『ダサイ』だった。 要はオシャレじゃない芸人さんは仮にネタが面白かったとしても不合格になるのだ。僕は疑問を抱いたが、時代の流れだろうか?そういう流れになっていたのだ。今現在、テレビを見ているとオシャレな芸人さんが大半を占める。その番組をやっていた頃はそういった風潮の分岐点だったのかも知れない。

 『オシャレじゃなければいけない』 と思い込んでる頃に良樹☆純三と出会った。二人とも、『爆笑BOOING』に出れば落選するだろうというルックス。
 当時の若い僕は 『売れそうに無い奴らと一緒に居ても損する』 と、傲慢な考え方をしており、最初の間は彼らと接する事を避けていた。

 良樹はオタク風、純三はチンピラ。それが彼らに下した僕の第一印象。だが、少しづつ話をしていくうちに見た目からは推測できない 『 純 』 な部分を発見していく。
 しかし、二人の舞台、ネタを見ればテレビでは放送出来ない内容。よって、舞台袖で見ている芸人には受けるのだが、客席は田舎の湖畔のように物音一つしない。客席には女の子が多く、出てきた途端、女の子にルックスから批判され、しかも毒ネタを嬉々と演じている彼らに黄色い声が飛ぶ事は二人の舞台からは無縁だった。その中で僕は二人の中身を知り、また、その漫才の面白さが伝わってくるようになっていた。伝わるようになってはいたが、放送出来ない。

 では、その放送出来ない、僕の好きな彼らのネタを一つ紹介したい。・・・・・・が、大丈夫だろうか?まぁ、軽く伏字を交えて紹介しよう。

 良樹 『漫才師でも誰かの弟子になると大変らしいですね』
 純三 『まぁ、衣装畳んだり、荷物を運んだりしないといけないですけらねぇ』
 良樹 『そう。例えばいとし・こいし師匠の弟子についたら大変やで』
 純三 『またなんで?』
 良樹 『臭い入れ歯とか運ばなあかん』
 純三 『いらん事言うな!』
 良樹 『後、村田○雄さんの弟子も大変や』
 純三 『いらん事言うなよ』
 良樹 『臭い義○とか運ばなあかん』
 純三 『だから言うなって言うとるやろう』

 僕はこのネタは好きだった。こんなネタを漫才コンクールの予選で演じる彼らも好きだった。
 こんな感じで下ネタも交えてネタをこなしていく。これではテレビに出るどころか、女の子のファンが付く筈が無い。彼らのファンと言えばもっぱら芸人だった。芸人から見れば『自分達が出来ないネタを彼らが平気でやっている』 その姿が面白かったのだ。

 そんな二人にも転機が訪れた。
 東京に行こうと決めたのだ。ある程度基盤のある大阪を捨てて。
 少し寂しい気もしたが見送った。二人は自分達がダサいとも気付かず、また、テレビでやれるネタをしていないとも気付かずに。

 二人はどうしているのだろうか。そんな事を思っていると、偶然会うチャンスが出来たのだ。
 東京の成増のファミリーレストランで、一年ぶりくらいに再会した。二人とも変わっていない。ただ、話を聞くと、東京に出てきてからかなり苦労したようだ。東京に出てきてオーディションに行くと必ず言われるらしい。『君達、ダサいよ』 『ガラ悪いよ』
 オーディションに落ち続けた後、自分達なりにオシャレに気を使い、髪の色を変え、チンピラに見えていた喋り方とかを変えたらしい。
 しかし、結果は変わらなかったと言っていた。そんな二人は口を揃えこう言った。
 『僕らねぇー、おしゃれしたり、髪染めたりして、ネタも若い女の子が笑えるようなネタやったんですわ。でもあきませんわ!何かねぇ、だんだん自分らしさが消えていくんですわ。やっぱ自分らがおもろいと思う事やらんとあきませんわ。客や審査員に合わせとってもテンション下がるだけですわ。これからイチから頑張ります』

 僕は、この言葉を聞き、二人にある種のシンパシーを感じた。周りに流されずに自分らしさを武器に戦っていこうとするその気持ちに。僕は、二人からパワーを貰った気がした。この調子ならお客さんにもパワーを与えられるのではないだろうか?

 初めて出会った時は 『 変な奴らと出会ったな 』 と後悔したが、再び出会った時は 『 粋な奴らと再会したな 』 と嬉しく思った。そして感動もした。
 人に感動を与えられる事の出来る人は素晴らしい。
 二人の 『 純 』 な部分は東京に来ても、苦労しても失っていなかったように思う。
 二人は、これからも 『 純 』 な部分を隠して、下ネタや毒舌を何処かで披露していくのだろうか?
 『純』な部分をひたすら隠し通し、『不純』なネタを追求し続ける『良樹☆純三』。
 そんな矛盾が交差する彼らの舞台、是非ご覧いただきたい。

END

当月号 TOPへ