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Just Jpan 2001 8月号
  ≡ インディーズ芸人列伝 Vol.2 「カピカピ」 ≡    
中村 壮快 

 さぁ、二回目を無事に迎える事が出来ました。今回は僕の事務所の後輩である『カピ・カピ』を紹介したい。

 カピ・カピとはボケのきっしゃんと突っ込みのちかこで構成されるコンビで、芸風は心に優しい漫才師という感じだ。
 カピ・カピは今年で4年目を迎える女漫才師なのだが、たった4年の芸歴で内容の濃いキャリアを持っている不幸なコンビなのだ。善良な皆様は『キャリア』という言葉を聞くと何か凄くかっこいいという衝動に駆られるだろうが、インディーズ芸人界で使う『キャリア』という言葉の意味は『人には自慢出来ないがネタにはなる』という意味で使われるのだ。インディーズ芸人ウオッチャーの皆様は覚えておく事をお勧めします(笑)

 コンビを組む前は二人共まともな働き人だったのだが、気が付けば各々一人芸として舞台に立っていたらしい。不幸の始まりである(笑)。そしてある日事務所の社長に『お前ら組んだらどうや』という一言でコンビ結成を決意し、不幸に拍車をかける事となる。そして『不幸』という名の汽車は走り出したのだ。思考錯誤しながらネタを作り舞台に立ち、悩んでまた舞台に立つという生活をしていると『不幸の仕掛け人』事務所の社長から『仕事が入ったぞ』という言葉を頂く。
 二人は喜んだ。心の底から喜んだ。私たちに仕事が入るなんて凄い!漫才師になって良かった!
 そういった感情を抱いていると、その仕事の内容は『キャバレーの余興』だったのだ。このデジタル時代にキャバレーなんて存在するのか?20年前の漫才師がやっていた仕事じゃないのか?ビール瓶が飛んでくるのではないか?ビートたけしさん著の『漫才病棟』の世界を思わせ、その思いに眠れなかったときっしゃんは言っている。

 仕事当日、社長に連れられ大阪から名古屋へ向かう。二日間の仕事だ。まず最初の店へ向かう。そして、いかにも『キャバレーの責任者』というルックスをした店長と打ち合わせをして舞台へ向かう。二人にその時の話を聞いてみると『記憶が無い』らしい。今度逆行催眠を掛けてでも聞いてみたい。とにかく覚えてる事は客の拍手と客の笑い声が無かったという事で店長に怒られもう一回ステージがあったのだが、キャンセルされた事くらいだと、ちかこは振り返っている。

 終了後、明日もう一日別のキャバレーで仕事があるので、とにかく社長の為にも頑張ろう!と無理やりポジティブに考えていると社長は『ワシ、今日大阪に帰るから明日も頑張れや。じゃあな』と言ってタクシーに乗って帰ってしまった。見えなくなったタクシーを見つめ二人は心の中で『どこかに売られた・・・・・・』と思ったらしい。不幸である。
 その晩、中途半端に汚いホテルの部屋に入った途端二人は泣いたらしい。怖さと恐怖と情けなさとが入り混じった今までに体感した事の無い感情を涙に変えたのだ。

 次の日、二人は麻薬患者のような様相で仕事をこなし、あれだけ喜んだ初仕事が終了した。
 大阪にボロ雑巾みたいになって辿り着き、社長の所へ行った。文句を言おうとしたらしい。しかし、さすがは社長、先手を打ってきた。『まぁ、何やな、芸人の世界は大変なんや。根性がいるんや、ほんまはあんな仕事はうちの事務所では受けへんけどな、今回お前らの根性見るために受けたんや。今後あれ以上きつい仕事はなかなかないで。根性付いたやろ。』
 二人は、何故か説得力のあるその言葉に屈服し納得してしまったらしい。不幸である。しかし、今では少々辛い事があっても『キャバレーよりはまだマシ』と思えるらしい。

 社長のいう通り、あの仕事をこなした事により根性が付いてどんな事でも乗り越えれるようになったのだろうか?カピ・カピにとってはプラスになったのだろうか?

 傍観者としてはどちらでもいいのだが(笑)

 その後も不幸な仕事や不幸な体験をしているが二人は口を揃えて『キャバレーよりはマシ』と言っている。不幸と思わない事が不幸である。
 しかし、そんな悲惨な体験から得た精神力が母体となり、きっしゃんの天然ボケやちかこの膨大な知識とリンクしていい味が出てきた。年々その『カピ・カピワールド』を欲する人が増え、今、関西で期待と信頼出来る女性漫才師として評判を得ている。
 安定給料を捨ててお笑いに足を突っ込み、コンビを組み、初仕事はきついキャバレーの余興、その後も様々な不幸を体験し、培ってきたカピ・カピワールド。
 楽な方に流れてしまいがちな現代人にアンチテーゼを投げかけ、辛い事でも正面からぶつかるカピ・カピ。
 『不幸』という名の汽車に乗って『成功』という名の終着駅を目指して走っているカピ・カピ。実は終着駅の無い『環状線』だったという人生を賭けたオチが待っているのかも知れない。

END

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